講演会
10月13日(日)16:00~18:45
文化講演①
京焼の中における八代 清水六兵衞の仕事
清水 六兵衞
先生(六兵衞窯 陶芸家)
■講演の内容
私で清水六兵衞としては八代目に当たります。初代清水六兵衞が京都五条坂に開窯したのは1771年と言われています。作風としては煎茶道具を得意としていたようです。二代は初代からの土味を生かした作風を継承していきました。三代は明治維新のころにあたり、陶器だけでなく磁器のものも制作するほか明治政府の殖産興業の方針に沿い、輸出向けの洋食器なども手がけました。四代は陶磁器デザインの改革を図るため洋画家や日本画家との研究会に参加し、新しいデザインの開発に尽力しました。五代は個人作家としての陶芸家としての地位を確保し、様々な釉薬やデザインの開発にも積極的に活動しました。六代も個人作家としてのスタンスで独自の焼成方法や釉薬を開発してきました。七代は造形を主体とした表現に挑んでいます、清水九兵衛として抽象彫刻家としても活動しました。そして私は大学で建築を学んだ後、陶芸の世界に入りました。作品は土を板状に伸ばしたあと、型紙にそって切り取り、組み立てていくという方法で作ります。空間というものが表現の中で大きなウェイトをしめていますが、建築に興味を持ったのもそんなことと関係するように思います。
清水家歴代は各自がその文化的、社会的背景のもと独自の陶芸表現を求めてきたところが特徴です。よって各代の作風はバラバラですが、そこに時代の流れの中での表現の変遷が見られるように思います。
Profile
1954年に京都に生まれる。1979(昭和54)年に早稲田大学理工学部建築学科卒業後、京都府立陶工高等職業訓練校で轆轤、京都市工業試験場で釉薬を学び、本格的に作陶活動に入る。1983(昭和58)年の朝日陶芸展’83でグランプリを受賞。
その後も数々の公募展において受賞を重ね、1980年代から90年代にかけて陶芸表現が拡大する時代の中で常に注目を集めてきた、制作は図面にあわせて正確に土の板を切り、結合させることでなされるが、器体にスリットを入れることで強度を操作する、あるいは重力の力を利用するなど焼成によるゆがみやへたりを意図的に造形に取り入れている。
2000年に八代を襲名し、以後、造形性を持った器物も含め、作品制作を展開する。2003年に京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)教授となる。2004年度日本陶磁協会賞を受賞。2022年京都市文化功労者。
文化講演②
近畿か関西か
井上 章一
先生(国際日本文化研究センター 所長)
■講演の内容
東北地方で生まれ育った人たちは、よく東北人と呼ばれます。しゃべり方が東北訛り、あるいは東北弁と言われることも、あるでしょう。東北地方ならではの料理も、しばしば東北料理と評されたりするのではないでしょうか。
九州地方も、この点は変わりません。九州人が九州訛りで会話をする。九州人魂をしめしてくれた。そんな言い廻しは、じゅうぶんありうるわけです。
しかし、近畿地方はちがいます。まず、このエリアで生まれ育った人たちが近畿人と呼ばれることは、ありません。たいてい、関西人です。近畿訛りや近畿弁という言葉も、耳にすることはないでしょう。どうしても、関西訛りであり、関西弁ですね。
関西風、関西流、関西文化という言い廻しは、流布しています。しかし、近畿風、近畿流、近畿文化という言い方は、存在しないのです。九州や東北と近畿は、どこがどう違うのでしょう。なぜ、近畿訛りなどは、言葉として成立しないのでしょうか。
ああ、それから中国地方です。このエリアでも、中国人とか中国訛りという言い方は使いにくい。中華人民共和国や台湾の中国と、区別がつきにくくなるせいです。ですが、それにしても、なぜあのあたりを中国地方と呼ぶのでしょう。海の向こうからやってくる中国人は、たいていあれにとまどうのです。
Profile
1955年、京都府生まれ。京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。
京都大学人文科学研究所助手、国際日本文化研究センター助教授、教授を経て2020年より現職。専門は建築史、文化史、風俗史。
1986年『つくられた桂離宮神話』でサントリー学芸賞、99年『南蛮幻想―ユリシーズ伝説と安土城』で芸術選奨文部大臣賞受賞。
『関西人の正体』『キリスト教と日本人』『日本に古代はあったのか』『伊勢神宮―魅惑の日本建築』『京都ぎらい』『京都まみれ』『ふんどしニッポン―下着をめぐる魂の風俗史』『ヤマトタケルの日本史―女になった英雄たち』など著書多数。
日整会単位申請
文化講演①②:1単位 必須分野14-5
日整会新システムにより、必ずご自身のQRコードをご持参ください。
教育研修講演
iPS細胞研究の現状と医療応用に向けた取り組み
山中 伸弥
先生
(京都大学iPS細胞研究所名誉所長、
公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団 理事長)
■講演の内容
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、ほぼ無限に増殖でき、体の全ての組織や臓器の細胞に分化できる多分化能を備える細胞であり、再生医療や創薬研究など、幅広い医療分野への貢献が期待されている。
我々は、iPS細胞を用いた細胞移植医療のさらなる発展を目指し、再生医療用iPS細胞ストック作製プロジェクトを進めてきた。本ストックを用いた臨床試験が加齢黄斑変性、パーキンソン病など10以上の疾患で進行中である。また、米国でもパーキンソン病の治験が開始され、iPS細胞を用いた再生医療は国内外で着実に前進している。
創薬研究では、いくつかの疾患で患者さんから樹立した疾患特異的iPS細胞を用いて病態モデルを構築することに成功している。この病態モデルを用いた効果的な創薬スクリーニングにより、FOPに対する既存薬の医師主導治験(2017年9月開始)や多発性嚢胞腎に対する既存薬の企業治験(2023年12月開始)などが進行しており、最先端の治療戦略の開発においてもiPS細胞技術の応用が期待できる。
世界中の多くの研究者によりiPS細胞研究が進められ、臨床応用に向けた技術開発も加速的に進化している。患者さんに1日も早く革新的治療オプションを提供するために、研究の早い段階から臨床医との連携を密にし、チーム一丸となって研究開発を推し進めていきたい。
Profile
1987年 神戸大学医学部 卒業
1993年 大阪市立大学大学院医学研究科 修了(医学博士)
2003年 奈良先端科学技術大学院大学 教授
2004年 京都大学再生医科学研究所 教授
2007年 Senior Investigator, Gladstone Institute of Cardiovascular Disease
京都大学物質-細胞統合システム拠点 教授
2008年 京都大学物質-細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター センター長
2010年 京都大学iPS細胞研究所 所長
2020年 公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団 理事長
2022年 京都大学iPS細胞研究所 名誉所長
日整会単位申請
教育研修講演:1単位 必須分野1
日整会新システムにより、必ずご自身のQRコードをご持参ください。